切なくも心に残る話(4)
防人に行くは誰が夫と問ふ人を見るが羨しさ物思ひもせず
万葉集 防人の妻の歌。よみひとしらず
先の大戦、徴兵令状は「赤紙」でした。
万葉の時代、役人が集落の掲示板に「おふれ」を張り出して知らせた
ことでしょう。
しかし、当時文字を読める人は限られていた。 集まった村民のために、
遠い筑紫の国に駆り立てられる男の名前を誰かが読み上げたのでしょう。
文盲の妻は発表を聞いて夫が徴兵されることを知った。
読み上げが終ると、周りから「防人に行く人は誰の夫なのでしょうか?」という私語が聞こえてくる。
羨ましいと思う哀切の心が伝わってきます。
なお、反戦か体制批判の歌と、一部の後世の人が断じるが、私はそうは思いません。