集団感染の数理モデルとシミュレーション(3)
第1部 1次元
図2Aは左から5番目E氏のウイルス量の場合です。
他の人も似た様な傾向です。 ただし、すみっこのA氏は特別で、全体的にウイルス値は若干小さくなります。
これは、左隣が不在なので、うつし貰うウイルス量が、その分、減るからです。
列や並びの集合時には、一番はじに位置取りすることは感染リスク軽減の為に賢明です。
これは、後の2次元解析でも再度登場するので「末端効果」と呼ぶことにします。
図2Bは、全員の平均値を、時間を追ってプロットしたものです。
うつし率が低いと、ウイルス量は時間とともに少なくなります。 その減少のパターンは図2Cで示す「凹減少」です。
一方、うつし率が0.5以上を越すと、ウイルス量は急峻な増加に転じます。
その増加パターンは図2Cの「凹増加」で、一部の専門家が頻繁に使う「指数関数」タイプです。
ではなぜ、「凹減少」から「凹増加」になるのか?
以下で具体的に考えます。
まず、低うつし率の場合の凹減少ですが、或る時点で次に隣から貰うウイルスは少量。
つまり、ウイルス量の増加は微小、よって、その次の増加分は更に減る。
これが繰り返されどこかで増加は頭打ちになりそうになる。
ところが、それは長続きしない。 貰う増加分がその時点のウイルス量を追い抜く時が来る。
すると、ウイルス量が増えたので、「うつし量」も増える。
そして、貰う「うつされ量」が増えるのでその人のウイルス量も更に増える。 悪のスパイラルです。
一方、うつし率が0.5以下の領域ではウイルスの初期値に関係なく「凸減少」が起り
最終的にはウイルスはその量ゼロとなって消滅することが図から見て取れます。
また、約0.5でウイルス量は初期値レベルに戻り、そこに維持されます。
うつされ量の新規増加が凸減少と釣り合う平衡状態です。
上を纏めると、うつし率0.5が臨界値、それ以下では凸減少でウイルス量は収束、
0.5の一線を越えると凹増加の感染爆発が起こることになります。
うつし率またはうつされ率はソーシアルディスタンスと関係ありそうですが、仮に大雑把でも結び付けは困難です。
ソーシアルディスタンスは日本では2mが一人歩きしている印象ですが、その科学的な根拠は薄弱、
誰かがエイヤッと決めたのでしょか?
国や地域によっては1mも1.5mもあります。 守られたかは疑問ですが、2,3ヶ月前のニューヨーク市では3mを
地元当局は指示しました。 エアロゾルも問題と提起したCDCなどの検証実験の影響だったと思います。