集団感染の数理モデルとシミュレーション(4)
第2部 2次元
図3A~Fのように10 x 10=100人が平面的に展開する集団を対象にします。
ウイルス量の初期値については、0.15から0.3の間にランダムに分布させ、平均値は0.25です。
個人対個人・うつし率p の値をいろいろ変えて、それぞれについて各人のウイルス量が時間(経過日数)と共にどのように変化し
ていくかを以下で見ていきます。
たとえば、p=0.18 の場合、五日目くらいまでウイルス量は低く抑えられています。
(図3A)。 7日目になるとウイルスに濃淡が出始めます(図3B)。
そこで、7日目に絞って、うつし率が状況にどう影響するかを比較します(図3C~F)。
以上の図3A~F から総合的に判断すると、うつし率0.17付近が感染爆発の臨界値であることが推定されます。
このことを、もう少し分りやすく纏めたのが図4です。
100人のウイルス量の平均値が時間とともに変化する様子を、うつし率pの値を変えてプロットしたものです。
臨界値はp=0.17前後であることが、このグラフから良く分ります。
恐らく、日本人の実直な国民性から、これまで臨界値以下をキープできていたのではないか?
だから海外のような大規模な感染爆発を回避できたのかもしれません。
しかし、自然災害時の避難所や対策が不十分なイベント会場や商業施設などで油断すれば
臨界値までの余裕がなくなるリスクは消えません。
さて、1次元のときの臨界値はp=0.5近辺でした。 ところが、今の2次元の値0.17は大きく下がる。 なぜか?を考えます。
1次元の場合は、左右または前後の隣の2人の影響を受けます。
一方、2次元では、隣は前後、左右、斜めと合計で8人です。 つまり、2次元の方が4倍厳しい状況です。
このことから、個人対個人うつし率の臨界値は4分の1、すなわち、0.25÷4=0.125になる筈です。
しかし、シミュレーションの結果は、0.17とかなり大きくなっている。
この差は「末端効果」の違いによるものと考えます。
1次元10人の場合、端っこは1人です。 一方、10 x10=100人の今のケースとなると、
末端効果を受ける人は「縁(ふち)」の 8 x 4=32人、それと、4個の角の4人です。
合計は100人中の36人です。 末端効果は、隣から貰うウイルス量を減少させます。
中でも、本来ならば隣は6人だが3人になる角の人の存在は大きく、末端効果をさらに助長します。
いずれにせよ、2次元末端効果は感染の厳しさを緩和する方向となり、結果、pの臨界値を1次元の値に
少しでも近づけることになります。