集団感染の数理モデルとシミュレーション(5)

第3部 一人の無症状・高濃度ウイルス保有者の存在。 クラスターの誘引と収束。 対策は?

参考 スーパー・スプレッダー問題

htps://www.technologyreview.jp/s/209175/whats-a-coronavirus-superspreader-and-what-can-we-do-about-them/

http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/sars/sars/spreader/

 

100人が暮らすコミュニティーがある。 住人のコロナ意識は高くマナーは良い。

全員が健康、これまでコロナ感染は一人も出でいない。 仮にPCR検査をしても

ウイルス量は極めて低く、個人対個人のうつし率も臨界値まで大きな余裕がある。

 

上のように想定するコミュニティーに、或る日、人知れずX氏が外部から1日だけ訪れていた。

実は、X氏は特殊な方、保有するウイルス量は桁違いに高い。 無症状なので、本人も周りも誰も知らない、気付かない。 

X氏はいったって健康で元気で行動的。 観光、飲食、買い物をあちこちで一日中楽しんだ後、

その日のうちに去っていった (図5A)。

 

その後のコミュニティーの様子をシュミレーションした結果を一連のイラストで示します。

 

 

 

ただ、15日、20日と長い時間が経過すると(図5E、F)、クラスターはゆっくり収束していき最終的には

元の平穏なコミュニテイーに戻る。 

これは集団免疫とは関係なく、X氏がいなくなれば起る純粋に数理的な帰結です(第1部図2Bの「凹減少)。 

ならば、じっと耐えていれば必ず光がさして来る? この楽観・安心はとんでもない。 

感染最盛期(五日目、7日目)を生き延びた人には当て嵌まるが、そうならなかった不幸な人は大勢いるはずです

なお、図の左下はX氏の通り道から遠い場所だが、クラスターの発達が全体的に目立つ。 

20日後でも痕跡が残っています(図5F)。 角の末端効果もない。 

多分、ランダムに与えら得れた初期の「ゆらぎ」が増幅されて残ったものと推察します。

対策は?

X氏のような人物はス-パースプレッダー(中国語では毒王)と呼ばれます。

名前なんてはどうでも良いが、便宜上、そういう言葉を使わせて貰います。

問題は、そのような人間の闖入(ちんにゅう)をどのような手段で防止するか?

すぐ思いつくのは「水際封じ込め作戦」。

しかし、都道府県や市町村が行う関所型の都市封鎖ではない。 三蜜が予測される場所、

たとえばイベント会場、ライブハウス、ナイトクラブ、商業施設などの入り口に於ける水際作戦です。

毒王の侵入阻止が目的です。

そこの検問検査の精度や感度は高くなくても構わない。 なぜかというと、

X氏のような桁違いに高くウイルスを持っている人間の発見が目的だからです。

 

そもそも、なぜ、業種や職種で水際の仕分けするのか? 不公平な差別ではないのか?

客、個人個人を対象にする「強制的」な検査が合理であり、強制という言葉に反応して、そのような仕分けを人権侵害と

問題視する人はまずいない。

現に、熱や症状の有無に関係なく入管ではそうしている。 我が国の良俗に害となる人間、たとえば、

犯罪者、テロリスト、麻薬売買・常用者などは、インターポール(国際刑事警察機構)のデータベースに照合確認して

入国させない。 コロナも同じはずです。

 

客個人対象の検査に話を戻して、大事なのはPCRの機械の数ではなく、スピード感と簡便性です。 

唾液検体と組み合わせたPCRや抗原検査のシステムを第2、第3波のコロナ来襲に備えて

築して貰いたいものです。

 

自粛要請が解除されると、当然人出が増え、人々の接触機会も多くなる。

人出が怖いのは三蜜の関係だけでなく、それまでジット自粛生活していたX氏のような

スーパースプレッダーも市中に開放されて、その分、そのような特殊人間に一般人が遭遇する

確率が高くなるからではないだろうか? 

この観点から、接触感染アプリ開発・普及努力の費用対効果は果たしてどうか?

 

マスク主義や、テレワーク主義など、盲目的にやり過ぎと感じる部分があるが、

スパースプレッダーを怖がってのことであれば了解です。

 

普通、人は火事の心配から屋内でも屋外でも火の始末には細心の注意をはらう。

しかし、一万人か10万人に一人くらい、そこまでの意識に欠ける者が存在しても

不思議でない。 そのような人間一人の不始末でカリフォルニアやオーストラリアで

起ったような野山の大規模火災が引き起こされる。 スーパースプレッダーを連想します。

 

スーパースプレッダーが確認された事例は私が知っているだけでもいくつかある。

サーズ流行のころ身内の結婚式で香港を訪れた中国人、韓国ではコロナ第二波のとき、

ソウルのナイトクラブを一夜に数多くハシゴし一人の青年など。

https://president.jp/articles/-/35371?cx_referrertype=yahoo&yhref=20200610-00036102-president-soci

古くは、欧州戦線参戦を決めた米軍の出陣式(カンサス州)でスペイン風邪ウイルスを撒き散

らした若い兵士。 日本では、京都の大学生もス-パースプレッダーだった疑いが強い。

人間の一億倍の感度と言われる犬がコロナ発見に役立つというニュースが

イギリスからあった。 どのような訓練をしたのか知らないが、麻薬や火薬の匂いに

反応する警察犬なら日本にも存在する。 イギリス発のニュースが本当なら、コロナ犬を早く

実用化すれば心強い。 特に、スーパースプレッダーの発見に役立つはずです。

 

ついでに、なんの情報も根拠もないが、カナリヤはどうか? 有毒ガスに超鋭敏に反応し、

炭鉱やオウム真理教サリン製造工場の捜索にも使われました。

これらはバイオアッセイ的手段の方向性です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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