自然災害  権力・権威の失墜と社会変容

 

 

中世:ペストのパンデミックとルネッサンスの開花

 

直近のブログで地動説がローマカトリック教会の権威を失墜させたことを書きました

https://pruning101.com/?p=1753。 

の前半部

 実は、教会の権威失墜の起因は、もう一つあります。当時ヨーロッパを襲ったペストのパンデミックです。 人々はパニックとなり、教会に救いを求めた。ところが、救済どころか、ペスト死は増える一方。大勢が押しかけた教会は三蜜の代表格だったので今から見れば当然の結果。

さらに悪いことには、司祭など聖職者の多くがペストに感染して死んだ。彼らはペストの犠牲者に「最後の祈祷」を施していた。 濃厚接触者だったことは間違いなく、これも当然の結果。

こうして、天動説の破綻とペスト対策の無力が重なって教会は人々の信頼を失っていった。

その後もローマ教会は宗教改革の苦難の逆風に堪えながら、体制を建て直した。 そして、フィレンツエ、ベネチアなどを中心にルネッサンス(文化芸術変容)の花が開いた。

フランス革命の背景 自然災害:寒冷化と小麦の不作

 

フランス革命は、不平等な階級制度(聖職者、王族・貴族、平民)に対峙して民衆が立ち上がった市民革命。フランスの3色国旗が象徴する自由、平等、友愛がスローガンでした。世界史に残る勇気ある一大快挙という賞賛と美談のイメージが定着しているようです。

 

実は、市民には生きるか死ぬかの切実な事情がありました。 食糧問題です。

この背景は気候の寒冷化です。 すなわち、先のブログで述べた小氷河期の到来でした https://pruning101.com/?p=1758。小麦は不作、主食のパンは高騰。特権階級の食卓にあるだけで人々は飢えに苦しみました。

後に断頭台の露と消えた、マーリー・アントワネットが「パンがないのならケーキを食べれば良いじゃない」と言ったと伝えられた。 こうしたこともあって、民衆の怒りは頂点に達して市民軍が組織され 武力を求めてバスティーユ牢獄を襲撃しました。 この事件をきっかけに農民たちの暴動が全国へと広がり、貴族たちの館が次々と襲撃されました。 また、ルイ16世と妻(マリーアントワネット)の 処刑後も多数の特権貴族がギロチンに送られ、フランスは恐怖社会となり革命が落ち着くまで旧体制(アンシャンレジーム)の反動もあり数年の時間がかかりました。

ともあれ、自然災害(寒冷化と小麦の不作)がフランス革命の大きな要因であったことは間違いありません。

ちなみに、イギリスやドイツも小麦粉が枯渇、代替の南米アンデス原産のジャガイモ栽培の真似と普及が無かったら大勢の国民が餓死したかもしれなせん。これも、自然災害がきっかけとなった生活変容です。

スペイン風邪パンデミック後の社会変容

志賀直哉スペイン風邪が猛威をふるった1918年の秋、家族や使用人にたびたび言いつけた。「むやみに外出するな」「人混みを避けよ」。こっそり芝居見物に出かけたお手伝いの女性に腹を立て、クビにするといきり立ったこともある。実体験をつづった小説『流行感冒』によれば、口うるさく注意した本人が感染した。

当時ウイルスは未知の存在でしたが、日本の対策は3蜜回避や不要不急の外出自粛、手荒い、そしてマスク着用。 スペイン風邪から100年経った今のコロナ禍と変わっていません。

今と変わっていない点がもう一つ。

コロナでもスペイン風邪でも、死者の人口比が諸外国に比べて日本と韓国(日本統治時代を含む)が突出して低い事実です。この説明の一つは日本固有の「ファクターX」、すなわち国民性なのかもしれません。https://pruning101.com/?p=1714

また日本人も韓国人も海苔など海草を日常的に多く食べる事実と関係しているという指摘もあります。免疫暴走(サイトカイン・ストーム)を防止する物質が海草に大量に含まれている効果という推測です。

http://www.asyura2.com/19/kokusai28/msg/352.html

スペイン風邪パンデミック後の社会変化については

https://note.com/i_partners/n/n2105fd70f511

に詳しく書かれています。 ポスト・コロナの参考としても貴重です。

天然痘:スペインのインカ帝国制圧、

免疫学の父ジェンナーとワクチンの発明

 

約1万年前から1980年のWHOの撲滅宣言に至るまで、人類を苦しめ、世界史に最も大きな影響を齎した疫病は天然痘です。

スペインが、アンデス地方に先住民が築いたインカ帝国を大きな抵抗なく制圧できたのは天然痘のお陰です。どういうことかというと、当時の先住民にとって天然痘は未知との遭遇。 なす術もなく犠牲者が続出。 一方、侵略者スペインの兵士はヨーロッパでの流行で集団免疫を獲得していた。スペイン人は誰も感染しなかった。 

先住民には神のように映り、畏敬の念から侵略者に服従してあっさり制圧された。

 

もし、天然痘パンデミックがなかったらワクチンの発明や免疫学はなかった。

天然痘の蔓延に危機感を抱いたエドワード・ジェンナー医師は、乳搾りなどによって自然に牛痘にかかった人間は、その後は生涯天然痘にかからないという農民の言い伝えに興味をもった。 ジェンナーは1778年から18年間、天然痘の予防に使えないかと研究を続け実の息子である少年に牛痘を接種した(使用人の息子という説もあり)。 そして、農民の言い伝えが正しいことを証明した。

これが天然痘に限らない種痘法の始まりであり、ジェンナーは「ワクチンの父」と呼ばれている。天然痘パンデミックという大災害が、犠牲者には申し訳ないが、人類に大きな福音を齎せた例といえます。

あとがき

本ブログの標題

「自然災害 権力・権威の失墜と社会変容」

について

・ペスト:中世パンデミックとルネッサンス

・欧州寒冷化とフランス革命

・スペイン風邪パンデミックと国際社会変容

・天然痘パンデミック:スペインのインカ帝国制圧、ワクチンの発明

 

では、新型コロナウイルスについてはどうか? ポスト・コロナの問題です。

自由資本主義経済は限界? 統制経済に向かう? グローバル化は?

世界中が自国ファースト? 人々の世界観、価値観、人生観は?

 

 

 

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