廃炉計画案(2)
少数意見あれこれ現状、経緯、問題キーワード:メルトダウン メルトスロー デブリ 水素爆発 放射性物質 大気・土壌・地下水汚染 除染
●地震のとき核分裂が自動停止した後でも、核燃料は崩壊熱を伴う放射線の放出を続けました。 普通ならば、冷却水があるので問題ありません。 言い換えれば、この電源喪失による冷却水の供給停止が大惨事の元凶でした。 ちなみに、チェルノブイリの事故は制御棒の不具合が原因で起こった原子炉の暴走と爆発で、福島は事故の性質が違います。
●ところが、暫くすると津波が福島原発を襲い、冷却水供給用のポンプの電源が失われました。圧力容器は空焚き状態となり温度は急上昇、そして容器は溶解しました。 溶け落ちた核燃料(デブリ)は圧力容器の底に溜まりました(メルトダウン=炉心溶解)。さらに、放射性のデブリは圧力容器を突き抜け格納容器に落下し(メルトスロー=炉心貫通)、また、そこも突き破り地層に達しているかもしれません(メルトアウト)。そうなれば地下水の汚染にも繋がります(実際、格納容器の底に穴が発見されています)。
●メルトダウンは水素爆発も起こし、原子炉建屋は大破し、多くの配管や容器の外壁も破損しました。結果、大量の放射性物質が大気、土壌、海に広範囲に放出されました。上の放射性物質とは放射性廃棄物、つまり「核のゴミ」そのものです。 放射性物質が「無害化」されるまでには時間がかかります(半減期、参考コラム1)。
加えて、たとえ除染をしても、新しい放射性物資が建屋内のデブリから放出され、それは風雨や海流と一緒に動きます。最終的には何かのモノに沈着します。あるいは、河川・湖沼の水や地下水に混ざりこみます。 こうして、大気、土壌、地下水の汚染、そして生体の慢性被爆が長期間続くことになります。
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______________________ 参考コラム1 放射線の種類は分類法により様々です。ここでは、二通りに分類します。
電磁放射線 γ線やX線です。 光と同じ電磁波の仲間です。ただ、波長は光よりずっと短い。 それは、エネルギーが大きいことを意味します。 粒子放射線 α線(ヘリウム同位元素)、β線(電子)、中性子線などです。
次の分類法では、放射線が、それを受ける対象物(人畜、植物など生物)に直接的か間接的かどうかという基準です。
「直接的」は一過性です。 広島原爆の放射線がそうです。 電磁放射線も粒子放射線のどれもアリです。 他方、核分裂が制御された状態で、かつ、防御遮蔽がしっかりしていれば問題になりません。
福島原発事故で大きな問題となるのは、「間接的」の方です。 どういうことかというと、原発施設が壊れ、大量の放射性物質が広範囲に大気、土壌、海に放出され場合です。
福島のケースでは、検出された主な放射性物質はセシウムとヨウ素の同位元素(セシウム131,137、ヨウ素137、ストロンチウム90など)です。 セシウム137の半減期(量が半分になる時間)は約30年ですが、β線とγ線を放出し、周囲に撒き散らした放射性物質の代表的な悪役です。セシウム放射線を完全に止めるためには数年から最高で数百年間の冷却が必要という試算があります。 強いγ線を出すヨウ素137の半減期は短く8日ですが、なぜか、消滅と再生を繰り返すと言われています。
参考コラム3 トリチウム(3重水素) |
A トリチウム人体無害論
トリチウムは「水素の仲間(同位体)」で、放射線を出す放射性物質です。
自然界では宇宙線と大気中の窒素、酸素が反応することで発生し、主に水の形態で存在しています(降雨中に1~3ベクレル/リットル)。また、原子力発電による核分裂よって発生する人工のトリチウムもあります。
トリチウムの放射能が半分になる期間(半減期)は12.3年です。放射線の一種であるベータ線を出しますが、そのエネルギーは非常に弱く、皮膚の表面で止まります。また、水と同じように新陳代謝などによって排出されるため、人間の体や魚、貝などの海産物に蓄積されることはありません。
1ベクレルのトリチウムを取り込んだ場合の被ばく量は、1ベクレルの放射性セシウムを取り込んだ場合の被ばく量の1000分の1程度です。
竹本科学技術担当相は、韓国への名指しは避けつつも、「事実や科学的根拠に基づかない批判を受けることもある」と指摘し、IAEAの調査結果に基づく「公正かつ理性的な議論」を加盟国に呼びかけた。
東京電力は、多核種除去設備「ALPS」を使って、大半の放射性物質を除去している。 ただ、現在の技術では、化学的に水素と同じ性質を持ち、自然界に大量に存在する放射性物質「トリチウム」を完全に除去することは困難だ。
河田氏は「(トリチウムを含んだ処理水の海洋放出は)世界各国でごく普通に行われている。 当然、韓国の担当者も分かっているはずだ」といい、次のように疑問を投げかけた。
「韓国東南部にある月城(ウォルソン)原発では、1999年に4号機が設置されて4基体制になって以来、累積で6000テラベクレルのトリチウムを放出したというデータがある。福島第1原発の保管タンクで貯蔵されているのは1000テラベクレル程度。つまり、韓国ではすでに日本の約6倍を海洋放出していることになる」 自国が大量放出しながら、他国を批判するとは、・・・・・。
河田氏によると、月城原発と同型の「CANDU型」原子炉の本家とされるカナダのブルース原発は、北米五大湖の1つ、オンタリオ湖に年間600~800テラベクレルのトリチウムを放出しているという報告もある。 さらに同氏は指摘する
「海ではなく、湖に放出しているのに、ブルース原発では0・0015ミリシーベルト程度の被ばく線量だ。日本人が普段の生活で受ける2・1ミリシーベルトの被ばく線量と比べても圧倒的に低い」
B トリチウム人体有害論
トリチウムは通常の水と同様、経口や呼吸、皮膚を通じて体内に入る。体内では普通の水と同様に血液や体液を通じて細胞内の様々な代謝反応に関与し、タンパク質や遺伝子(DNA)の中の水素に取って代わる。こうして細胞の構成成分として取り込まれたトリチウムは容易に代謝されず、トリチウムがベータ線を出して崩壊すると、化学結合が切れてその分子も壊れる。このように体内の有機物に取り込まれたトリチウムは、セシウムのように単に元素として体内に存在し放射線を出す放射能とは全く別の挙動をする。
トリチウムを取り込んだ細胞の染色体が壊れることはよく知られた事実である。その結果、先天異常や死産・流産などが起こることも指摘されている。セシウムなどと違って、母親の胎盤はトリチウム水と普通の水を区別出来ず、胎児に取り込んでしまうからである。このように、トリチウムの効果は崩壊時に出すベータ線の被曝だけではなく、一般的な放射性物質による照射被爆とは異なる次元の、構成元素の崩壊という分子破壊をもたらす。いわゆる照射被爆は確率論的現象だが、DNAの破壊はトリチウムの崩壊と共に必ず起こる現象である。米国カリフォルニア州のローレンス・リバモア国立核研究所のT. ストラウムらの研究(1991~1993)ではトリチウムによる催奇形性の確率は致死性ガンの確率の6倍にのぼる。
このようにトリチウムは高レベル廃棄物ともに技術的に処理できない、原発のもう一つのアキレス腱である。
いずれにしても、
トリチウムが人体に有害であれ無害であれ、原子炉建屋・土台、敷地の全部を丸ごと根こそぎ石棺詰めにし、日本海溝1万メートル海底に放棄すれば我々の生活に影響することは半永久的に有り得ない。