偏見・差別・隔離・排除(2)
被爆被害者の追跡調査を阻む理由と事情
yahooブログ(2018年3月)の再掲
キーワード: 福島 広島 長崎 チェルノブイリ 甲状腺癌 ヨウ素131 遅発性 隠れ癌
過剰診断 不要摘出手術 政府 住民・自治体 DNA 遺伝子 子孫
プライバシー 偏見・差別 風評被害 被爆難民
A 医学的事情
福島
A1 まだ7年のデータ。 未知の部分が多い。
A2 甲状腺癌の発症は放射性ヨウ素131の蓄積量と関係します。 チェリノブイリでは数年経ってから
甲状腺癌が増え始めた。この癌は遅発性癌であり、発症の個人差は大きい(被爆時、被爆後の生活環境)
A3 過剰診断問題。近年の癌研究で「隠れ癌」の存在が明らかになりました。
多くの普通の人には、元々、小さな癌がある。その殆どは生涯ひっそりと静かにしている。
隠れ癌が顕在化することなく、本人も知らないで他の原因で死んでいくというものです。
事故後に行なわれた大規模の集団検診で少しでも甲状腺に異変があると、精密検査を実施。 その結果、
眠っている隠れ甲状腺癌が掘り起こされることが多くあった。
中には、子供を含めた何人かの患者に甲状腺摘出手術が行なわれました。
しかし、隠れ癌であった可能性がある。 親族は無用の手術だったと考え訴訟を起こしている。
今日、過剰診断問題との関係で、福島流の集団検診→精密検査は止めるべきという
意見が医学界で大勢となっているようです。
広島・長崎
A4 宇宙線も含め放射腺はDNAを傷つけます。
他方、放射腺は微量なら良いこともします(突然変異と生物進化)。
しかし、原爆のように瞬時・大量被爆の場合、子孫への影響の程度については
データ不足で明確なことは不明です。
B 政治的背景
福島
B1 国と被爆自治体の対立。特に当初、国は事故の犠牲を矮小化する傾向があった。
実害を受けた住民と、その自治体の感覚とは同じではなかった・・・対応の温度差(A2やA3とも関係)。
チェリノブイリの件でもソ連政府は似たような対応でした。
ただし、ソ連・ロシアの或る著名な科学者(名前忘れた)はチェリノブイリの医学的、政治的な真相解明に
長年徹底的に毅然と取り組んでいます。
(ドキュメンタリー報道番組。彼がロシア当局に逮捕されたとは今のところ聞いていない)。
広島・長崎
B2 広島大学を中心に日本全国から急遽召集された医師達が必死の治療をした。 終戦後は米軍医も協力した。
長崎へは九州大学医学部の教授以下医学生が応援に駆けつけた(当時学生、今は退職の元教授から直接聞いた)。
しかし、日本側の貴重なカルテは全てアメリカに持ち去られた。
天皇の戦犯免責と取引がGHQとあったと言う歴史家がいる。しかし、それ以上に、米ソ核戦争を予想した行動
だったという説に説得性がある。
なお、本論の流れからは外れますが、捕虜を生体実験の犠牲にした731部隊の裁判を主導した
ソ連は生物化学兵器のデータと引き換えに被告人・日本軍将兵を釈放しました。
米ソは冷戦に備えて日本から非人道・軍事医療データの分捕り合戦をしていたのです。
C 社会的要因
福島
C1 被爆者が苦しむ風評被害。集団検診後の精密検査で “本当の” 甲状腺癌(A3の“隠れ癌”ではなく)
のケースもあります。 もちろん、被爆が原因か否かとは関係なく治療を受けることになります。
病院や医師に守秘義務があるが、通院していれば、そのうち噂が広まることは容易に想像できます。
そして偏見と差別に繋がる可能性も高い。 将来の縁談にも影響しかねない。
故郷を捨てて遠く離れた地に一家で移り住むという話も聞きます。「国内・被爆風評難民」です。
福島・広島・長崎
C2 生存被爆者が子供や孫のことを思い、追跡調査に協力的でない事実も分る気がします。
広島では被爆者名簿の作成さえもままならないと聞きます。
放射腺被爆と人の遺伝子との関係の調査研究は進みません。 残念ではあるが仕方がありません。
- A,B,Cの内、最も難しい問題は、Cの「社会」ではないでしょうか?
福島の廃炉計画は困難とはいえ、それでも50年後には何とか解決していることでしょう。
100年後には原発事故そのものが風化した思い出になっているかもしれません。
しかし、C1やC2はどうだろうか?
これらは人の心に深く関わる問題です。 人種偏見や差別とも似ています。
何世代か経てば変わる? それとも半永久的に無理なのでしょうか?
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