アメリカと中国の覇権争い:ロシアは第3勢力になれるか?
米ロ日の環・北太平洋同盟:対中国シナリオ
yahoo掲示板(2016年12月)のアップデート
キーワード: 北方領土 プーチン 安倍 ラブロフ 中国 アメリカ アラスカ アリューシャン
千島列島 カムチャッカ半島 北太平洋 中国包囲圏 EU エストニア
戦後からずっと日本政府の主張は、領土問題の解決が先、日ロ(日ソ)平和条約は後でした。ロシアは逆の順番に固執してきました。
ところが昨年、ウラジオストックの日露首脳会談でプーチン大統領が、突然、「前提条件なしで平和条約の締結を互いに考えよう」 と言い出しました。領土問題の棚上げ発言です。
当初、日本政府は「ちゃぶ台返し」の思いつきと一蹴し相手にしなかった。
ところが、いつのまにか、安倍政権は手のひら返しの日露外交となり今に至っています。
昨日の本ブログ「安部ープーチン仮想対談」の紹介するように、
ロシア人には固有の領土という概念など昔から存在しない。
国土というものは戦争などで取ったり取られたり。
プーチンが言うように領土とは戦利品ということです。
ソ連は日ソ中立条約(不可侵条約)を反故にして日本の北方4島を略奪した、怪しからんという世論が日本国内で根強くあります。 しかし、それは正しくない。日本の敗戦はいつか? 天皇の玉音放送があった8月15日ではなく、国際法上は、9月2日、米艦船ミズーリで重光全権が降伏文書に署名した瞬間とされています。
さらに、実は、その約一月前に、ベルリン郊外のポツダムに連合国の首脳が集まり日本の敗戦処理について協議した。 その過程で、日本に無条件降伏を迫る声明を出し(ポツダム宣言)、玉音放送の直前に日本は受け入れた。ポツダム宣言にはチャーチル、トルーマン、蒋介石が署名した。 しかし、大事なことは、スターリンは署名しなかった。 また1951年、主権国家・日本が回復したサンフランシスコ講和条約にもソ連は不参加だった。
以上から、日ロは今も、朝鮮半島のように、「休戦」状態。 だから、北方領土問題を話し合う前に先ずは平和条約の締結が筋、という最近までのロシアの論理となります。
この主張をトーンダウンしたプーチンのウラジオストック発言は何を意味するか? 米中の覇権争いに、経済の日本を抱き込んでクサビを打ちたい?
本稿の仮想会談で主張を言い合う喧嘩が一段落すると、
北方2島の①領有権をロシア、自治権は日本(仮想・プーチン)、あるいは、②領有権は日本、自治権はロシア(仮想・安倍)、との主張が双方にあります。
現在2島はロシアが実行支配だから、①の方は無理が無い、それと、②は日米安保条約の観点から事がややこしくなる。
そこからは仮想プーチンの調子があがり、持論を展開する独演状態。 大統領は、俺に任せてくれと言う。
2島だけでない、4島も。 それは現ロシア領の北千島列島からカムチャッカ半島に繋がる。 その先には中国包囲網を見据えた環・北太平洋同盟の構想がある。 この為にはアメリカにも協力してもらう。 アリューシャン列島とアラスカ州の軍事基地を米ロで共同運営する。 中国と覇権を争うアメリカにとっても悪い話ではない。
このくらいの大言壮語をすれば、ロシア国民はプーチンが日本と妥協することを納得するだろうと仮想対談のプーチンは考える。・
時代を戻してゴルバチョフの後、日露は暫く良好な関係だった。 橋本龍太郎と日本の経済援助が欲しいエリティンの仲は非常に良く、二人は2度の首脳会談をもった。 シベリヤ・クラスノヤルスクと伊豆・川奈で行なわれ、領土問題への日本の期待は高まった。
ところが、橋本はスキャンダルに巻き込まれ失脚、そして病死した。 エリティンも持病が悪化して世を去った。
2000年にロシアの新しい大統領に就任したとき、プーチンは自分の在任中に北方問題を解決すると言い切った。 しかし、台頭してきた資本主義経済の新興勢力との熾烈な主導権争いが待っていた。 プーチンの頭は領土問題どころではなかった。やがてロシアの国内は落ち着きを見せたが、今度はウクライナ問題が起きて対立する西側から制裁を受けることになった。 日本も同調し、プーチンを怒らせた。 そして北方領土問題の解決は後退したかに見えた。
一方、長年の懸案だったエストニア(EU国)との領土問題はロシアの妥協で落着した。EUをロシアが意識した結果だった。 今回の日露領土交渉もロシアが中国と米国を意識すれば、日本に有利な決着があるかもしれない。
ロシアの保守派を代表するラブロフ外相は今回も日本に対しても厳しいスタンスを崩さない。 ロシア側はエストニアを含めた各国とのこれまでの領土交渉で、第2次大戦による旧ソ連の領土拡大の是非を巡る議論に一切応じない姿勢を堅持していた。ラブロフ外相は会見で北方領土に関し「これは領土紛争ではない」と強調。 言い換えると、第2次大戦の結果は国際的に認められているとしてきた。
プーチンはロシアの国内感情を忖度してラブロフを利用? いや、ラブロフも分っている役割分担かもしれない。
確かに、ロシアにはEU加盟国との領土紛争の解決により、EUとの経済関係を拡大したい思惑もある。 事実、ラブロフ外相は会見で、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンでつくる関税同盟とEUとの自由貿易協定の近い将来の締結に期待感を示した。
事実、ラブロフは、「領土問題解決への協議ではこの現実(新・ロシア ーエストニア国境)を出発点にすべきだ」と発言し、従来の考えをヨーロッパにおいては改めた。
東アジアにおいては、EUの役割を中国とアメリカが担い、日本は「極東のエストニア」になるというシナリオを期待することは無理でしょうか?
プーチンの任期は安倍より2年長い。 日本は焦らず粘り強く交渉を続けることです。
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