変な日本語(続18) 物、もの
何を具体的に指しているのか? 分るような、分らないような。
でも日本人なら分る。
今回は この続きです。
日本語は「物」や「もの」が昔から多く使います。例えば、
物悲しい、物静か、物物しい、物おじする、物の道理、物申す 物が違う 物語
ここで、辞書的に「物」または「もの」は、
①人や動植物、山河、雨風など自然の事象
②抽象的な概念や心理、
③または、両者を包含した複合体
「物悲しい」や「物静か」はどうか? 「物」は単なる接頭語の飾りではない。「物」を外しみると
「悲しい」や「静か」となり、伝える何かが失われます。
ちなみに、昔の人達を振り返っても、
・しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで
・逢ひ見ての のちの心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり
・風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
・みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ
・長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れて今朝は 物をこそ思へ
・人も惜し 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は
上は小倉百人一首からです。
それぞれの「物」は、それぞれの思いが込められているものと察します。
古文に出てくる「もののあわれ」ですが、この語句は人の心にもう少し踏み込んだ奥深い
意味をもつ感じです。 次の稿で書きます。